そもそも戦略とは?
わかったようでわからない「戦略」という用語
当社の社名(Your Strategy)の一部にもなっている「戦略」(Strategy)ですが、ビジネスシーンでは非常によく使われる用語だと思います。いろいろな人が、いろいろな場面で、戦略という用語を使うのを耳にします。
たとえば、
- 同僚と居酒屋で飲みながら「うちの会社には戦略がない」と文句を言う社員
- 「この案件は戦略案件なので、採算度外視で受注しに行くぞ」と言う営業部長
- 「DXを進めたいけれど、ITがわかる人材がいない。優秀な人材を確保するための採用戦略が必要だ」と言う社長
などです。
これらの発言は、戦略という言葉の使い方としては、おそらく適切だと思います(うちの会社には戦略がないと居酒屋で文句を言うこと自体は、あまり得策とは思いませんが)。
しかし、あらためて、「戦略って何ですか?」と聞かれると、明確に答えることは容易ではありません。
この戦略ノートでは、中小企業の経営者や従業員の方がどのように戦略を作り、実行していけばよいのか、具体的な方法について考えていくわけですから、そもそも戦略という言葉を定義しておく必要がありそうです。
戦略の範囲
戦略という言葉が、わかったようでわからないような状況を引き起こす一因として、経営戦略、マーケティング戦略、人事戦略、財務戦略、IT戦略、外交戦略、成長戦略、地方版総合戦略、キャリア戦略など、いろいろな○○戦略が存在することがあげられると思います。
ビジネスシーンでは、一般的に会社全体の経営戦略があって、その下に各部門(分野)の戦略があるという構造が多いと思いますが、この戦略ノートで、主な検討の対象にするのは会社全体の経営戦略です。
ただし、この戦略ノートは主に中小企業を念頭に置いています。
大半の中小企業にとって、最大の関心事は、「自社の商品・サービスをいかに買ってもらうか」ということ(いわゆるマーケティング)でしょうから、経営戦略とマーケティング戦略は非常に近いものになると考えられます。
なお、「マーケティング」もわかったようでわかりにくい言葉ですが、ここでは、「商品やサービスが売れる仕組みをつくること」と捉えておきます。
当社なりの戦略の定義
大辞林によれば戦略とは、
長期的・全体的展望に立った闘争の準備・計画・運用の方法。
とされています。
確かにおっしゃるとおりという感じですが、ビジネスで使うためには、ちょっと抽象的なように思います。
そこで、
「お客さまにとって価値のある商品・サービスを、自社ならではのリソースを使って、 競合に対して差別化された形で提供するための中長期的な方針を示すもの」
などと表現すると、多少、具体的に考えやすくなるかと思います。 この戦略ノートでは、これを、経営戦略(中小企業にとってはマーケティング戦略といってもよい)の定義として、議論を進めていきます。
一方、戦略と似て非なる言葉に戦術があります。
大辞林の戦略の項では、わざわざ「戦略の具体的遂行である戦術とは区別される。」と書いてあります。
同じく大辞林によれば、戦術とは、
① 個々の具体的な戦闘における戦闘力の使用法。普通、長期・広範の展望をもつ戦略の下位に属する。
② 一定の目的を達成するためにとられる手段・方法。 「牛歩−」
とされています。
これもわかったようで、結局のところあまりよくわかりません。
「戦略は全体で、戦術は部分だ」と言う人もいます。
しかし、仮に戦略が全体で戦術が部分だとすると、
ある会社の営業をどうしようと考える際、社長が考えるなら経営の一部分だから「戦術」でしょうが、営業部長から見ればそれは自分の仕事全てなので「戦略」になると思います。
同じ内容が、考える人によって戦略になったり戦術になったりしては、非常に扱いにくいです。
これに対して、戦略・戦術の本質的な違いとして私が考えている点があります。
それは、
「戦術は今すぐできること。戦略は今すぐにはできないことも含めてよい。」
という点です。
戦略の定義として、
「お客さまにとって価値のある商品・サービスを、自社ならではのリソースを使って、 競合に対して差別化された形で提供するための中長期的な方針を示すもの」
という表現を用いましたが、この中に「中長期的」という言葉が入っています。
ここに、今すぐにはできないことも含めてよいというニュアンスを入れ込んでいます。 中長期的とはどれくらいのことかというと、少なくとも1年以上、感覚的には3~5年程度かなと思います。
3~5年程度あれば、研究開発をしたり、試作品を作ったり、新たな人材を採用したり、できることの幅が広がります。
その間に、失敗も多いかもしれませんが、それは決して無駄にはなりません。一つひとつの失敗は会社にとって貴重なノウハウ・財産になりますので、3~5年後には今できないこともできるようになっているかもしれません。
今すぐにはできないことも含まれた戦略を策定し、努力しながら実行して、できることを増やしていく。
当社が考える戦略は、そのようなイメージです。
ユアスト 江村さん
ぜひ、しっかりした戦略を策定し、日々、努力しながら実行していきましょう。
まとめ
- マーケティング戦略、人事戦略、財務戦略、IT戦略など、各分野の戦略もあるが、本サイトが主な検討対象とするのは会社全体の経営戦略である。ただし、中小企業においては、経営戦略とマーケティング戦略は非常に近いことが多い。
- 本サイトでの経営戦略(≒マーケティング戦略)の定義「お客さまにとって価値のある商品・サービスを、自社ならではのリソースを使って、 競合に対して差別化された形で提供するための中長期的な方針を示すもの」
- 戦略には、今すぐにはできないことを含めてもよい。努力を積み重ねて、できることを増やそう。