人事評価制度は戦略を実行するためのツール
戦略は実行してこそ意味がある
パート2では、戦略の作り方に関して、いろいろ考えてきました。しかし、戦略ができると、そこで満足してしまって、その実行まで至らないということは意外に多くあります。
戦略を作る際に、頑張りすぎてしまうと、パワーをそこで使い果たしてしまい、戦略の実行に回す余力が残っていないということにもなりかねませんので、策定する戦略に完璧さを求めないということも重要かもしれません。
なぜ人事評価制度なのか
さて、戦略を実行するためには、どうすればよいでしょうか。
戦略の内容にもよりますが、社長や経営層だけで実行できるという戦略は少ないでしょう。もちろん、設備投資など、社長が決裁すれば、あとは自ずと実行できるものもあるかもしれません。
しかし、 機械を購入するだけで事業がうまくいくなら、話は簡単です。実際には、購入した機械を活用して、お客様に支持される商品を作ったり、サービスを提供することで、はじめて設備投資の効果が出てくるというのが一般的だと思います。そして、商品を作ったりサービスを提供するには、現場で働くスタッフの活躍が不可欠です。
スタッフの方に活躍してもらい戦略を実行していくためには、
- 戦略自体が魅力的であること
- 戦略について知ってもらうよう、経営層がよく説明すること
などが考えられます。
しかし、何よりも、スタッフの方の活躍につながるのは、戦略と人事評価制度を連動させることではないでしょうか。
仮に、ある電器店が「地域のお客様の、家電に関するお困りごとにきめ細かく対応することで、何かあったら相談してもらえるような存在になる」という戦略を作ったとします。具体的には、電球を交換したい、パソコンやスマートフォンの使い方がわからない、食器洗浄機の調子が悪い、といった地域の方(特に高齢の方が多いかもしれません)の細かい要望に、丁寧に応えていくことで、困ったときはこの電器店に相談しようという意識を醸成していくようなイメージです。
その背景には、たとえ、その場(地域のお客様のお困りごと対応)で売上があがらないとしても、信頼できる電器店という印象をお客様に持ってもらったり、お客様との会話を通じてお客様の潜在的な需要を見据えた提案ができるといったメリットがあるため、長期的にはお店にとってプラスになるだろうという考え(戦略)があるはずです。
しかし、この電器店のスタッフの方が、評価期間内の個人別売上高で評価されるとしたら、多くのスタッフは、地域のお客様の小さな相談に一つひとつ応えるよりも、とにかく商品を販売したいと考えるのではないでしょうか。そうなってしまっては、戦略は絵に描いた餅になってしまいます。
この戦略自体は、地域密着型の電器店としては、非常に有力な選択肢だと思います。
これに対して、例えば、戦略に連動した指標である「お客様の相談に乗って、問題を解決した数」で評価されるのであれば、スタッフの方は、戦略に沿った行動をとりやすくなります。
戦略を実行するのが現場のスタッフであり、スタッフの方の行動に大きな影響を与えるものが人事評価制度であるため、当社では、戦略を実行するための有力なツールとして人事評価制度を捉えています。
ユアスト 江村さん
自社の人事評価制度は、戦略を実行するためのツールとなっているか、チェックされてはいかがでしょうか。
まとめ
- 戦略を実行するためには、現場で働くスタッフの活躍が不可欠。
- そのためには、戦略と人事評価制度を連動させることが必要。