戦略ノート

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よくある問題を解決できる「中小企業向けシンプルな人事評価制度」

人事評価制度は、一人ひとりの働き、会社(組織)への貢献に応じて評価し、処遇に差をつけるための有用な制度ですが、適切な制度設計・運用がなされない場合、「忙しい中、手間ばかりかかって、何の意味があるのかわからない」とネガティブに捉えられてしまうことも少なくありません。 

ここでは、人事評価制度が導入されている職場でよくある問題を振り返った上で、当社が提唱する「中小企業向け シンプルな人事評価制度」ではどのようにそれらの問題を解決できるかについて整理したいと思います。

人事評価制度でよくある問題

社員(被評価者)にとって 

日々の業務に忙しい社員の方にとって、3ヶ月や半年ごとにやってくる人事評価制度への対応は、面倒くさい場合も多いでしょう。

私自身も、業務を片付けた後で、たくさんの評価項目から構成された評価シートを、わけわからないなあと思いながら記入して、来期の目標を考えて、夜遅い時間に上司と面談をしていた記憶があります。

その際、よく感じたのは、「そもそも、今期の自分の目標ってなんだったっけ?」ということでした。

当時、私が在籍していた職場で運用されていた人事評価制度は、社員それぞれが評価期間の期初に目標を6つほど設定して、期中にその達成を目指すMBO(Management by Objective:目標による管理)と、25項目からなる能力評価・情意評価を組み合わせたものでした。

しかし、MBOの目標に関して、私はたいてい覚えていませんでした。

期初(評価時点から遡ること6カ月)には確かに自分で設定してシートに記入したはずなのですが、日々の仕事に忙殺される中で、そのシートはそれ以降の半年間で開かれることは一度もなく、その存在すら忘れていたというのが正直なところです。

25項目もある能力評価・情意評価のほうは言わずもがなで、覚えようとする意欲も全くありませんでした。

また、期末には、評価期間を振り返って自己評価を行った上で、上司と面談して、上司の評価を受けるという流れでした。

当時の上司は、誠実かつ親身になって対応してくれる方でしたが、それでも、上司の評価に納得できないことも多く、「上司は私のことを見てくれていない」などと感じることもありました。

今振り返ると、上司に対して申し訳なかったなあと思いますが、明確な論拠も持たずに「この評価には納得できない」などと上司に食ってかかったことも1回や2回ではありませんでした。

上司(評価者)にとって 

人事評価制度に関する不満は被評価者からも多く聞きますが、評価者である上司からは、「評価が難しい、大変」といった声があがることは少なくありません。

当時、私が在籍していた会社のように、評価項目がたくさんあれば、何人もいる部下の、一つひとつの項目について、評価(ここでは1から5までの成績をつけるという意味)をするというのは、そもそも大変です。

特に、能力評価・情意評価などでは、抽象的・定性的な項目(例えば、組織運営に積極的に参加しているなど)が多く、この人は3、この人は2などとつけていくことは、非常に難しい(もしくは不可能といってもよい)作業です。

ましてや、当時の私のように、不満をぶつけてくる部下も少なくないと思います。

それらの不満を和らげ、解消することは、容易ではありません。

「内心では2をつけたいけれど、文句を言われそうで、それに対して客観的・論理的に回答するのも大変だから、平均点である3につけておこう」と上司が考えたとしても、しかたないのではないでしょうか。

部下のほうも大人でしょうから、最終的にはどこかで妥協点を見つけることになるかと思いますが、部下・上司とも、人事評価制度を前向きに活用できる状態には程遠いと言えます。

一方、人事評価制度で非常に細かいこと(Aさんの組織運営への参加度合がどうだったかなど)に気を取られていると、上司にとって本来重視しなくてはいけない仕事に手が回らなくなるということも考えられます。

たとえば、「会社の経営戦略を理解して、それを自らの部署に展開する」といったことが疎かになってしまうかもしれません。「会社の戦略? 改めて言われるとなんでしたっけ」という上司は意外の多いように思います。

経営層にとって 

会社の経営層としては、自分たちが考える方向に現場の社員に動いてもらいたいでしょうが、現場は日々の仕事に追われており、経営層の思惑が現場まで伝わらないことも多いと考えられます。

これは、人事評価制度だけの問題というわけではありませんが、「経営層の思惑」、「現場の動向」、「人事評価制度」がバラバラになってしまっていることは、経営上の大きな問題と言えるでしょう。

「中小企業向け シンプルな人事評価制度」で問題解決できる  

前項では、人事評価制度でよくある問題を、社員(被評価者)・上司(評価者)・経営層それぞれの立場からピックアップしてみました。

ここでは、当社が提唱する「中小企業向け シンプルな人事評価制度」の場合、これらの問題がどうなるかを考えてみます。

「中小企業向け シンプルな人事評価制度」の流れは以下のとおりです。

  1. 売上ではない、会社の戦略として全社一丸となって追い求める「戦略指標」を探す
  2. 会社全体の戦略指標値を改善するために各部門が貢献できる「先行指標」を探す
  3. 「戦略指標」・「先行指標」の値を改善させるべく日常業務を行う
  4. 「戦略指標」・「先行指標」の値をどれくらい改善したかで評価する

本制度において、それぞれの社員は、日々の業務を通じて「戦略指標」・「先行指標」の値を改善させるべく努力することになります。

日常業務を行う際には、定期的(毎週など)にミーティングが行われ、指標値の確認や、指標値改善に向けて各自が何をするかなどが話し合われます。

そして、評価期間の期末において、評価期間中にどれだけ「戦略指標」・「先行指標」の値を改善することができたかという点で評価されることになります。

「戦略指標」・「先行指標」の値の改善が目標であり、日々の業務や定期ミーティングの中で、その数値や目標に対する達成状況はいつも気にすることになりますので、「今期の私の目標ってなんだっけ」という疑問は(普通に仕事をしていれば)出てこないはずです。

また、戦略指標値・先行指標値は客観的に数値化されるので、「上司の評価には納得できない!」ということにもなりません。

定期ミーティングにおいて、上司は、部下の指標値改善をサポートすることになりますので、評価時点になって「上司は私のことを見てくれていない」と感じることは少ないでしょう。

一方、上司(評価者)にとっては、指標値が客観的に出るため、部下の評価(3にするか2にするかなど)に頭を悩ませる必要はありません

評価期間中から指標値は可視化されているので、期末の評価時点には、単にその時点の数値を拾うだけです。

ですので「評価が難しい、大変」といった声は出なくなります。

また、「戦略指標」・「先行指標」は会社の戦略を踏まえて期初に設定したものですので、「会社の戦略ってなんでしたっけ?」という疑問も出てこないでしょう。

さらに、社員が、上司のサポートのもとで、よい評価を得られるよう努力し、現場の仕事が順調に進んだ場合(戦略指標値・先行指標値がよい方向に進む)、経営戦略も前に進んでいるはずですので、経営層にとっては、「我々が意図した方向に現場はがんばってくれている」ということになります。

 ユアスト 江村さん

ユアスト 江村さん

このように、「中小企業向け シンプルな人事評価制度」は、人事評価制度で起こりがちな様々な問題を一挙に解決できる非常にパワフルなツールと言えるかと思います。
ぜひ、あなたの職場でも導入してみませんか。

まとめ

立場 よくある人事評価制度 中小企業向け
シンプルな人事評価制度
社員(被評価者)にとって 今期の私の目標ってなんだっけ 基本的に2つの指標(先行指標、戦略指標)値の改善が目標なので覚えられる。また、日常的にその改善を目指すので、評価の時期になって目標を忘れていたということはない。
上司の評価には納得できない! 客観的な数値で結果が出るので納得しやすい。頑張れば評価につながりやすい。
上司は私のことを見てくれていない 上司は日常的に部下の目標達成をサポートする
上司(評価者)にとって 評価が難しい、大変 客観的な数値で結果が出るので評価は難しくないし、評価する時点では既に結果が出ているため大変でない
会社の戦略? 改めて言われるとなんでしたっけ 戦略が日常業務や人事評価制度に直結するので、戦略を忘れるということはない。
経営層にとって うちの社員は意図するとおりに働いてくれない 戦略が現場に浸透するため、経営層の意図する方向に現場が動きやすい。